塗装と調色の用語
塗装には3つの目的があるとされる。
まず

1.色彩を加えることで見栄えを良くする目的、
2.表面を錆や水分、その他の外的な条件から守る目的、
3.色によって他のものと区別する目的である。


3はややわかりにくいかもしれないが、例えば消防自動車の赤やパトカーの白黒ツートンが自動車塗装に関係する。
一般的には1と2が自動車塗装の目的と言えるだろう。
中でも1は直接目に見えるだけに、最も重視されてきたが、2も近年になって大きな配慮が払われるようになってきた。
世の中の塗装には様々な方法が用いられているが、ボデーショップではスプレーガンによる吹き付け塗装が中心である。
この方法は大きな設備を必要とせず、比較的低コストで実行でき、仕上がりのよい点で優れている。
また塗料のロスも少ないないため、いくつかの異なる方法が提案されたこともあったが、やはりスプレーガンに勝る方法は未だに現われない。
ただし巨大な設備と均一な状態の塗装物を相手にする新車塗装ラインでは、静電塗装や電着塗装など、より効率的なと双方法も採用されている。

塗装された塗膜は、数種類の塗料が塗り重ねられていることが多い。
自動車塗装では3〜5種類程度の塗料が塗り重ねられている。
いくつかの異なった目的のために、それぞれ別の種類の塗料が用いられるからだ。
これらの塗料は鋼板面に塗って錆を防ぐ下塗り塗料、表面のデコボコを埋めるための中塗り塗料、目に見える色彩を生み出す上塗り塗料に大きく分類することができる。新車塗装はほぼこの3種類が順に塗り重ねられている。

補修塗装では、さらに多くの塗料が用いられる場合もある。
これらの塗り重ねられた塗料は、どれかひとつが優れていればいいというわけにはいかず、すべての塗料の性能のバランスが取れていることが大切である。
このように1種類の塗料だけでなく、塗り重ねる塗料の組み合わせによる塗膜全体としての能力を<塗装系>と呼ぶ。これはより多くの塗料を塗り重ねる補修塗装にとっても重要なことである。
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塗料の粘度が高すぎて、スプレーガンで吹き付けたとき、塗料が微粒化しないで糸を引いたような状態になって塗装面に付着すること。くもの巣状の模様になる。特殊な効果を狙うカスタムペイントでは、意識的に糸引きを作って模様にする場合もある。その場合耐候性や付着力はほとんど期待できない。
原色をホワイトなどで薄めたとき、どんな色になるかが色あしである。原色の状態では色が濃いため、微妙な色の感じは分かりにくい。色あしで見るとそれぞれの原色の特徴がよくわかり、調色の役に立つ。塗料メーカーの原色表には100%の色とともに、必ずホワイトやメタリックベースで薄めたときの色あしの塗り板が添えられている。
吹き付け作業の中心となる工程。上塗り塗装では、まず全体を薄く、はじきの有無を確かめながら塗る「はじき止め」または「捨て塗り」と呼ばれる工程があり、そのあとで下地が透けなくなるまでしっかり塗り込んでいく。これが色決めである。塗色や塗料によって異なるが、シングルコート3〜4回、ダブルコートなら2回程度となる。色決めの後はムラ取りを行なって仕上げる。
新車の塗装は、カラーコードが同じなら、どの車も同じ色になっているはずだが、実際には塗料の納入時期、ラインの違い、気候条件などで色に差が出る場合がある。これが色ずれで、使用顔料や塗装方法などの違いで、ほとんどずれがない色もあれば、同じカラーコードでも4〜5種類ぐらいの違う色の車が走っている例もある。 補修用塗料メーカーでは、できるだけずれた色にも対応できるよう、計量調色の配合データを、ひとつのカラーコードに対して数種類用意することが普通になってきた。
色の属性
何か特定の色を表現する場合、「赤みを帯びた黄色」とか「茶色っぽい紫」などと言葉で表わしていては、人によってイメージする色はまちまちになる。これをある程度客観的に表現するために彩度、色相、明度の3種類の単位が用いられる。これが色の属性である。基準のとり方にはいくつかの方法があるが、我が国では1905年にマンセルによって考案され、1943年に修正された修正マンセルシステムがJISによって決められている。  <色相>は色の種類で、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、紫(P)を主要5色相とし、それぞれの中間色を加えた10色が基本となる。基本になる各色はさらに隣り合わせになる色との間で10種類に分けられ、1〜10の番号が付けられている。基本になる色の番号は5である。この方法では数字と記号で色相が決定される。つまり純粋の黄緑は5YG、赤とだいだい色の中間は10Rか1YRの辺りという具合である。  <明度>は色の明るさを表わす。反射率100%の白から全く光を反射しない真っ黒までを9段階に分け、標準明度としている。実際には反射率100%や0%という色(を持ったもの)は世の中には存在しない。  <彩度>は色の鮮やかさである。色味が強いとか、冴えた色調というのは彩度に関係する。彩度ゼロは無彩色の白や灰色などで、同じ明度の灰色に比べて、どの程度色味があるかで最大14段階程度まで分けられる。この分類数は色相や明度によって異なる。  3種類の属性で色が決定されるということは、それぞれの属性をx,y,zの3次元座標に置き換えることができる。そうすれば様々な色は、色相や彩度、明度によって立体的な位置が決まる。こうして作った立体モデルが<色立体>である。
色むら
吹き付けた塗料が均一に広がらず、ムラのある状態で塗膜になるトラブル。吹き付け方法が悪くて起きる場合と、塗料が変質していて起きる場合がある。ウレタン系塗料が普及し始めた頃、最初の捨て吹きでラッカー系塗料と同じように、バラバラと吹き付けるスプレーマンが時折いた。 これで生じたムラは、後の色決めやムラとりでもなかなか解消できなかった。ウレタン系塗料はラッカー系塗料に比べると、一度の吹き付けでの膜厚が大きく、ムラも極端になってしまうためだ。今ではそんなことをする人は少なくなったし、塗料の変質もほとんどない。塗料そのものもムラが出にくいように改良されている。ただしメタリック塗装でのメタリックの戻りムラは、まだまだ頭を痛めている人も少なくはない。
色やけ
塗装後長期間すぎて、塗膜表面が荒れたり、顔料の変質で色が変わってしまった状態。昔は新車塗装でも5年もすぎると色が浅くなったり、ムラになったりしたものだが、最近の新車塗装は5年や6年ではびくともしない。補修塗装もラッカー時代は、せいぜい1年でクリヤーが変色したり、赤系や黄色系の色が飛んだりして無惨な姿になったが、ウレタン系塗料が普及して以来そんなことも少なくなった。 ただし新車の色は、見た目では変化がないようでも、調色しようとするとカラーコードのオリジナルの色と若干違っている場合もある。標準的な計量調色では合わせられないが、同じカラーコードでも少しずつ違った色の配合データも増えており、カバーできる範囲も広がっている。
色分かれ
塗料中の顔料が均一にならず、塗膜の色がムラになった状態。充分に撹拌していない塗料を使ったり、塗料が変質している場合に起きる。よく似た言葉に色上り(のぼり)もあるが、こちらは調色した塗料の顔料の重さの差で、軽い顔料が塗膜表面に浮き上がってきて色が変わってしまうことをいう。
隠ぺい力
ボデーカラーによっては、何回塗り重ねても下地の色が透けて見える色がある。透明感の強い色で、赤や黄色などに多いが、これらは隠ぺい力の弱い色である。<とまり>が悪いとも言う。そんな場合、何度も何度も塗り重ねしていれば、塗料の使用量も多くなるし時間もかかかる。その上膜厚が厚くなりすぎれば、塗膜としての性能にも悪影響が出る。そこで、最初はよく似た色で下地を隠し、その上からぴったり合わせた隠ぺい力の弱い色を塗る、というテクニックが用いられる。また、同じ色を塗る場合でも、塗料によって隠ぺい力の強い弱いが出る場合がある。これは塗料によって顔料を含む量が違うせいだが、自動車補修用塗料では、あまり極端な差はなくなっている。  透明感が強く鮮やかな色彩のボデーカラーが増えている。その種のボデーカラーは隠ぺい力の弱い色が多い。一般に塗料というものは、膜厚が薄すぎても厚すぎても必要な能力を発揮できないようになっている。新車の塗装でも下色を塗っている例もある。
ウエザオメーター
優れた性能の塗料でも、非常に長い間屋外に放置し、太陽光線の直射や雨風にさらされれば、いつかは光沢もなくなり、はがれ落ちいていく。ここまでどのくらいの期間が必要かは、塗料の種類や環境の条件によって異なるが、自動車用塗料では少なくとも数年はかかる。これらのことを短期間で再現するため、太陽光線や湿度などを人工的に集約して塗膜に与え、耐候性を判断するための装置がウエザオメーターである。太陽光線の代わりに紫外線を発する光源を使い、圧力をかけた水を噴霧して、1年間に塗膜が受ける影響を、10日程度で調べることができる。
ウエットオンウエット
塗装作業では、まだ乾燥しないで塗れたような状態にある塗膜をウエットと呼ぶ。先に吹き付けた塗料が乾燥しない間に次の塗料を吹き付ける作業がウエットオンウエットである。追っかけ塗りとも言う。主にメタリック塗装の着色層の上にクリヤーを塗るときに使われる。 ただし、着色層を完全に乾燥させてからクリヤーを塗ることはあまりない。時間を置いて溶剤を充分飛ばしてから(見かけはまだウエットだが)クリヤーを塗る方法に対して、あまり時間を置かないですぐにクリヤーに入る方法をウエットオンウエットと呼んでいる(どのくらい短ければそう言うのかは程度の問題)。 また、フッソ塗料など、クリヤーをクリヤーの上に塗り重ねる場合では、完全に乾燥硬化させてから次のクリヤー塗る方法と、下のクリヤーを塗ったすぐ後や少しだけ時間を置いてから、次のクリヤーを重ねる方法がある。こちらも後者がウエットオンウエットである。なおドライオンウエットとはあまり言わない。
ウォータースポット
塗膜上に白い斑点ができるトラブル。原因は乾燥不充分な状態で屋外に出し、雨や夜露に当たった、洗車などの水滴を塗膜上に残したまま、直射日光に当てた、などである。どんな塗膜でも、完全に硬化乾燥してしまえばそれなりの能力を発揮するが、乾燥不充分だと、たとえ最新のウレタン系塗料でも、ひ弱なものである。塗膜の性能は乾燥の度合いに応じて発揮される。 一般に60℃×40分とかで指定されているのはコンパウンド可能時間か屋外放置可能時間で、そこまでしっかり乾燥していれば外に出しても大丈夫である。しかし溶剤が完全に抜けて、塗膜の性能がフルに生きてくるまでには、ウレタン系塗料では2週間から1カ月ぐらいかかる。その間、自動洗車機にかけたり、質の悪いワックスを使うと、塗膜にダメージを与える場合もある。この辺りは納車時にしっかり顧客に注意しておくべきだろう。なお、自社で使っている塗料の乾燥段階に応じた性能は、塗装マニュアル類などで調べておきたい。
上塗り塗装
主にボデーの色彩を担当する塗装で、<トップコート>、<フィニッシュ>とも呼ばれる。一番上に塗ってある塗装という意味では、クリヤーしか含まれないことになるし、アンダーコートやシャシーブラックも、確かに一番上の塗装だが、ちょっと意味あいが違う。  上塗り塗装に使う上塗り塗料は、外観を決める性質を持っているだけに、ボデーショップにおいても特別扱いされがちだが、上塗り塗料が美しい色彩と光沢を発揮し、それを長く保つためには、しっかりした下地の存在が欠かせない。その意味では下地作業にも上塗り同様の注意深さとていねいさが求められるはずである。  新車の上塗り塗装には、約150℃の熱を加えて硬化させる焼き付け型塗料が使用されている。補修用はほとんどがウレタン系塗料で、中でも作業性の良い速乾ウレタンが数の上では多い。
鉛筆硬度
鉛筆には6BからB、F、HB、そして9Hまで、いろいろな硬さが揃っている。これを塗膜の硬さの判定に利用するのが鉛筆硬度である。計測では、力の入れ方で違う結果が出ないよう、専用の試験器もある。判定では、硬度の違う鉛筆で何度も塗膜を引っかき、隣り合った硬度で、2回以上傷のつくものと傷付かないか1回だけ傷付くような組合わせを捜す。そして傷付かなかった方がその塗膜の鉛筆硬度である。新車の焼き付け塗料は、鉛筆硬度でH〜2H程度、補修用上塗り塗料では、ウレタン系なら同等のH〜2H、ラッカー系塗料ではF〜H程度である。
オーバースプレー
スプレーガンで吹き付け塗装した場合、吹き付けた塗料がすべて塗膜になるわけではない。塗装面に当たって跳ね返ったり、マスキングに付着したり、もっと広い範囲に飛び去ったりする。自動車補修のスプレーガンでは、実際に塗膜になる塗料は、吹き付けた塗料の半分程度とされている。塗膜にならず塗料が無駄に消えてしまう現象をオーバースプレーと呼んでいる。
黄変
塗膜の色が黄味を帯びてしまうトラブル。クリヤーや白系の塗膜に目立ち、太陽光線や高温の影響が原因である。昔のラッカー系塗膜は、太陽光の紫外線に弱く、ひどい場合は半年ぐらいでクリヤーが黄色っぽくなったり割れたりした。現在のウレタン系塗料では、耐候性が向上しているのでそんなことも少なくなったが、硬化不充分だったり、硬化剤の配合を間違えると、カタログ通りの性能が発揮できず、トラブルにつながることもある。なお、初期のウレタン系塗料では、硬化剤を入れると少し黄味が出たり、単体クリヤーだと黄変しやすいと言われたが、今ではそれも解消されている(はずである)。